本記事では、自筆証書遺言の作成サポートの内容について詳しく説明します。
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)とは、文字どおり、遺言者本人の自書(本人が自らの手で紙に書くこと)によって遺言を作成することをいいます。
法律で定められている遺言の方式には、自筆証書遺言のほか、公正証書遺言(公証人が遺言者の意思に基づき遺言を作成する方式)、秘密証書遺言(公証人が封緘済みの遺言の存在を証明する方式)、危急時遺言(死亡の危急に迫った者にだけ認められる方式)があります。
自筆証書遺言の4つの要件
自筆証書遺言の方式には、法律上有効とされるための4つの要件が定められています。自筆証書遺言の作成には、前提として、この4つの要件のすべてを満たす必要があります。
【要件1】自書(遺言者自らの手で書いたものであること)
まず、遺言の全文を、遺言者自らが書く必要があります。
これは、遺言に書かれた文字の筆跡によって、遺言者自らが書いたものであることを確認し、遺言が遺言者の真意に出たものであることを確保するためです。
なお、「自書」の基準は厳格に解されており、パソコンやタイプライター、他人による代筆などは、自書には含まれないとされています。
【要件2】日付(遺言書の作成日がわかること)
次に、遺言書を作成した日付の自書が必要となります。
これは、自書による遺言者の真意確保に加えて、複数の遺言を作成した場合などにその先後関係を明確にするためです。(複数遺言がある場合の抵触する内容については、後にした遺言が有効となります)
そのため、「〇年〇月吉日」といった、日付が特定できない場合には無効とされるのでご注意ください。
【要件3】署名(遺言者の名前があること)
遺言者の名前を自署することも必要です。
当たり前ですが、だれが書いた遺言かわかるように、遺言者の氏名を書いて特定する必要があるためです。
なお、特定できることが重要なので、苗字だけや(下の)名前だけ、通称、ペンネームでも問題ないと考えられています。ただ、後々のリスクを考えると、特別の理由がなければ、戸籍上の氏名で署名すべきでしょう。戸籍上の氏名に加えて、住所・生年月日も記載すれば、特定性の観点からは、尚よしです。
また、署名は、遺言書自体にする必要があります。この点、過去に遺言書ではなく封筒(未封)にだけ署名押印がなされていた事例について、無効とした判例もあるので注意が必要です。
【要件4】押印(遺言者の印鑑で押印すること)
最後の要件は、遺言者の印鑑で押印がされていることです。
これは、全文の自書とともに、遺言者が所有する印鑑で押印することで、遺言書の作成が遺言者の真意によるものであることを担保するためとされています。
・認印でも、指印(拇印)でもよい(最高裁平成元年2月16日)
・封筒の封じ目にされた押印でもよい(最高裁平成6年6月24日)
・日本文化になじみのない欧米人が作成した押印のない遺言は有効(最高裁昭和49年12月24日)
・花押(サイン)を書くことは押印の要件を満たさない(最高裁平成28年6月3日)
押印についてもさまざまな判例がありますが、押印の趣旨から考えますと、特に理由がない限りは、実印で対応すべきでしょう。
遺言書保管制度でより便利になりました
令和2年7月10日より、法務局での自筆証書遺言の保管制度が開始されました。
この遺言書保管制度を利用することで、従来の自筆証書遺言で課題とされていた「遺言書の保管」や「相続人による検認(裁判手続き)」といった問題は解消されるため、より便利に、より安心して、自筆証書遺言を作成できるようになりました。
自筆証書遺言作成サポートとは
「遺言を作りたいが、相談できる相手がいない。」
「自分の希望をどのような文章で表現すればいいかわからない。」
「遺留分や特別受益、寄与分といった法律上の制度も考慮した上で、残された家族みんなが納得できるような遺言を作りたい。」
当事務所が提供する自筆証書遺言作成サポートとは、遺言を作りたい方が、真に納得のいく自筆証書遺言を作れるように、内容のご相談・原案(文案)の作成から、法務局への遺言書保管申請まで、遺言作成に必要な一連のお手続きすべてをサポートする法務サービスです。
自筆証書遺言作成サポートの主な内容
自筆証書遺言作成サポートの主な内容(業務の流れ)は次のとおりです。
ご自宅または事務所にて、行政書士が初回のご面談をお受けします。初回面談では主に次に事柄を中心にお聞きしています。
- 遺言を作りたいと考えた理由
- 現在の財産状況と今後の見通し
- ご家族(主に推定相続人)の関係
- 現時点で希望する遺言の内容
ご相談時にお聞きした内容を基に、現時点での財産目録・推定相続人関係図を作成します。財産状況・親族関係について不明な点などがあれば、各機関での調査も行います。また、初回面談時のご意思を基に、たたき台となる遺言原案も作成します。
作成した資料を基に現時点の財産状況・推定相続関係のご報告と、たたき台となる遺言原案を、一文ずつていねいに説明します。また、適宜、法律上・経験上の観点からのアドバイスも行いながら、一緒に遺言の内容を検討していきます。
2回の面談で確定できなかった内容については、お電話や追加面談等でご相談いただき、納得のいく内容が確定したら、当事務所にて確定後の遺言原案を作成します。
作成後、適宜の方法(ご自宅に持参または郵送)にて遺言原案(確定)をお引渡しいたします。また、お引渡し時には、遺言原案の内容を再度ご説明します。
遺言原案を基にした「自筆証書遺言の作成(遺言者本人による自書)」が終わりましたら、当事務所にて、遺言の様式(要件に適合しているか)の確認を行います。確認後、必要に応じて法務局での遺言書保管申請の予約(別途オプション)を行います。
遺言書の保管申請に必要な書類の確認・申請書の作成を行い、予約当日には、法務局(遺言書保管所)に同行いたします(別途オプション)。
【Q&A】遺言”原案”は、自筆証書遺言とはどう違うの?
法律上有効な遺言として取り扱われるためには、定められた要件をクリアする必要があります。その要件のひとつに、「自書(遺言者本人の手で書いたもの)であること」が定められています。
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
民法968条1項(自筆証書遺言)
つまり、自筆証書遺言を作成できるのは、遺言者本人だけなのです。
行政書士は、権利義務又は事実証明に関する書類を作成することができる国家資格者(行政書士法1条の2)として、遺言原案の作成や相談を受けるといった、遺言作成のサポートができるにとどまります。これは、他の資格者であっても同じです。
そのため、遺言原案が確定しても、遺言が完成したことにはなりません。確定した遺言原案を基に、遺言者本人の手で、紙に自書することで、自筆証書遺言がはじめて完成します。遺言原案と自筆証書遺言は全くの別物ですのでご注意ください。
遺言の作成において、最も重要なことは「遺言原案(遺言の内容)をどうするか」です。多くの方にとって経験がなく、また、信頼して相談できる方が少ないのが遺言の作成かと思います。
当事務所では、相続業務歴9年目の司法書士・行政書士が、あなたのお話しをじっくりとお聞きし、法律的・専門的・客観的立場からのアドバイスをしながら、納得できる遺言をつくるために、全力でサポートいたします。
相談のご予約は、専用ウェブフォームから受付中です。ぜひご利用ください。