遺言書の保管方法【山梨県内での保管申請の場合】

令和2年7月10日より始まった、全国312の法務局(遺言書保管所)での遺言書保管制度。当事務所でも、先日、山梨県甲府地方法務局への保管申請に同行してきました。
本記事では、遺言書保管申請の予約方法から当日の申請・保管完了までの流れについて、くわしく説明します。

事前準備(書類の作成と申請予約)

① 自筆証書遺言を作成しよう

まずは、保管申請する「自筆証書遺言」を作成しましょう。

自筆証書遺言は、法律上の要件を満たすものでなければ、無効として取り扱われてしまいます。また、要件自体はクリアできていても、遺言の内容(法律上の適切な表現で書かれているか、法律上の制度を考慮した内容となっているかなど)については、十分な検討が必要です。

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ここで注意すべきは、出来上がった遺言を封筒に入れて、糊付けしてしまわないことです。従来の自宅保管の自筆証書遺言は、改ざん等を防ぐために、遺言は封筒に入れておくことが必要でしたが、遺言書保管制度を利用するのであれば、保管は法務局(遺言書保管所)が行いますので、封筒に入れて糊付けする必要はありません。

また、遺言書が複数枚になる場合でも、ホチキス留めをしないようにしましょう。

② 申請できる遺言書保管所を確認しよう

自筆証書遺言の作成が終わったら、申請できる遺言書保管所を確認しましょう。

遺言書保管制度は、自分の好きな保管所に申請できるわけではなく、保管申請できるところがあらかじめ決まっています。

保管の申請ができる遺言書保管所
  1. 遺言者の住所地を管轄する遺言書保管所
  2. 遺言者の本籍地を管轄する遺言書保管所
  3. 遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所

上記3つのどれかに該当する遺言書保管所であれば、保管申請できます。ちなみに、山梨県内には遺言書保管所は3つ(①甲府地方法務局本局、②大月支局、③鰍沢支局)あり、それぞれの保管所が管轄するエリアは次のとおりです。

遺言書保管所管轄エリア(山梨県)
甲府地方法務局・本局
(甲府駅北口から徒歩5分)
甲府市
甲斐市
南アルプス市
中央市
中巨摩郡昭和町
笛吹市
山梨市
甲州市
韮崎市
北杜市
甲府地方法務局・大月支局
(大月駅から徒歩10分)
富士吉田市
都留市
大月市
上野原市
南都留郡
北都留郡
甲府地方法務局・鰍沢支局
(富士川町鰍沢2543-4)
西八代郡
南巨摩郡

③ 申請書を作成しよう

自分が申請できる遺言書保管所が確認できたら、次は、遺言書保管申請書を作成しましょう。

保管申請書は、法務局のウェブページからダウンロードすることができます。また、保管所窓口にも備え付けの用紙が用意されていますが、記入する箇所も多く、また、申請書は機械処理されることから、できれば、パソコン入力したものを持参した方がベターです。

申請書の記載方法等は、上のリンク先ページにくわしい説明が掲載されているので確認してみてください。

ちなみに、当事務所に遺言書保管申請サポート業務をご依頼いただいた場合には、申請書の作成は、司法書士が行います。

④ 保管申請の予約をしよう

申請書の作成が終わったら、いよいよ保管申請の予約をしましょう。予約は、①専用ウェブ、②電話、③窓口のいずれかですることができます。

専用ウェブページから予約する方法

専用ウェブページから予約する方法は次のとおりです。
(メールアドレスの入力が必要となりますので、メールアドレスをお持ちでない方は、「電話」または「窓口」で予約しましょう。)

専用ウェブサイトにアクセスする

リンク先ページの下の方に、甲府地方法務局の各管轄(本局・大月支局・鰍沢支局)のボタンがあるので、申請する管轄局のボタンをクリック。

申請する管轄局を間違えないように

申請日を選択する

予約申込に関する事項を確認後、「上記の内容に同意する」にチェックをしてから、ページ下にある日付を選択。

下の「同意する」にチェックを入れないと日時選択できないので注意
申請希望日(〇がついている日)を選択
時間帯を選択する

希望する時間帯を選択してから、下の「予約する」ボタンをクリックします。申請手続には通常1時間程度はかかることから、甲府地方法務局本局での予約時間帯は1時間30分単位で区切られています。
(①9:00~ ②10:30~ ③14:00~ ④15:30~)

希望する時間帯(〇がついている時間)を選択→「予約する」ボタンをクリック
利用者登録の確認

利用者登録についての確認ページが表示されるので、「利用者登録せずに申し込む方はこちら」ボタンをクリックします。(もちろん登録してもOKですが、一般の方にとって法務局での手続きは頻繁に利用するようなサービスでもないので、わざわざ登録しなくてもいいと思います。)

利用規約に同意する

表示される利用規約を確認した後、下の「同意する」ボタンをクリック。

メールアドレスを入力する

予約申込画面にアクセスできるURLを受信するためのメールアドレスを入力します。入力後、下の「完了する」ボタンをクリック。

受信メールに記載のURLにアクセスする

メール送信完了画面が表示されるので、受信したメールを確認します。

メール送信完了画面
受信メールにあるURLにアクセス

予約画面に必要事項を入力し予約を申し込む

予約画面が表示されますので、必要事項をすべて入力し、下の「確認へ進む」ボタンをクリック。確認画面で内容に間違いないことを確認できたら、ページ下の「申込む」ボタンをクリックして、予約申込みは完了です。

業務種別は「遺言書の保管の申請」を選択

ちなみに、当事務所の遺言書保管申請サポートでは、こちらの予約申込についても司法書士が代行いたします。


電話または窓口で予約する方法

管轄の遺言書保管所に電話して、または窓口に直接出向いて、予約することもできます。

甲府地方法務局・本局

〒400-8520
甲府市丸の内1丁目1番18号(甲府合同庁舎6階・供託課)
電話:055-252-7151(代表)
取扱時間:午前8時30分から午後5時15分まで

甲府地方法務局・大月支局

〒401-0012
大月市御太刀2丁目8番10号(大月地方合同庁舎)
電話:0554-22-0799(代表)
取扱時間:午前8時30分から午後5時15分まで

甲府地方法務局・鰍沢支局

〒400-0601
南巨摩郡富士川町鰍沢2543番地4
電話:0556-22-0174(代表)
取扱時間:午前8時30分から午後5時15分まで

申請日当日(持ち物・手続きの流れ)

当日の持ち物

前日までには持ち物をすべてそろえて、当日はゆとりをもって出かけられるように準備しておきましょう。

保管申請当日の持ち物リスト
  1. 遺言書
  2. 遺言書保管申請書
  3. 本籍の記載のある住民票の写し(取得後3か月以内)
  4. 顔写真付き本人確認証明書(有効期限内のもの)
  5. 保管申請手数料(3900円)
  6. 遺言書に押印した印鑑(訂正用)

※③の住民票の写しに代えて、戸籍の附票+戸籍抄本でもOK
※④の代表例は「運転免許証(経歴証明書を含む)」「マイナンバーカード」
※⑤の手数料は、申請書に収入印紙を貼付する方法で納める必要があります

申請手続の流れ(甲府地方法務局・本局の場合)

ここからは、実際に甲府地方法務局・本局に同行したときの流れを、時系列でご紹介していきます。

(10:00頃)立体駐車場に到着

今回申請に同行した甲府地方法務局・本局は、甲府駅北口の合同庁舎の中にあります。本局は、甲府駅からも徒歩5分と便利な立地にありますが、今回は、遺言者の方を私の自動車でお連れしたため、庁舎に隣接する立体駐車場に車を停めました。この立体駐車場は、庁舎に用事がある方は無料で利用できます(出向いた先の窓口で駐車券がもらえます)が、庁舎内には法務局のほか、甲府税務署も入っており、確定申告の時期(2月・3月)の立体駐車場は大変混み合います。この時期に保管申請をする方は、時間に十分な余裕をもって出かけるようにしましょう。

さて、今回同行した方の予約時間は10時30分でした。だいぶ早めに駐車場に着いてしまいましたが、早めに受付だけして待てばいいか、ということで、とりあえず庁舎内の遺言書保管所に向かうことにしました。

本局の遺言書保管所は、庁舎の6階の供託課にあるので、エレベーターに乗り込んで、6階を目指します。

EV内の庁舎案内。よくみると、6階のオレンジ部分に「供託・遺言書保管所」の文字(読みにくい!)

(10:10)遺言書保管所に到着・受付

6階につくと、エレベータ前にわかりやすく案内板が立てられており、初めて来た方でも迷うことがないようにちゃんと配慮がされています。

矢印(→)に従い進んでみると…
供託課(遺言書保管所)があります!

入口を入って、右側が戸籍課(成年後見など)の受付、左側が供託課・遺言書保管所の受付なので、左側の窓口に進みましょう。

入って左側の窓口。保管所の案内の紙がちょっとやぶれてる…

窓口では、保管申請の予約をしている旨と予約者の氏名を伝えます。その後は、遺言書保管官の案内に従い、持参した書類一式と身分証明書を渡しましょう(身分証明書は写しをとってすぐに返却してくれます)。

受付後、まずは遺言書保管官が書類をチェックしてくれますので、窓口前のイスで待ちます。【所要時間目安20分】

申請書貼付の収入印紙について

遺言書の保管申請手数料3900円は、保管申請書に収入印紙を貼付する方法で納めます。
この収入印紙ですが、甲府地方法務局本局では、遺言書保管所と同じ6階に収入印紙の販売所があるので、申請前に販売所に立ち寄って、収入印紙を購入することもできます。

印紙の購入は赤矢印「証明書・印紙」に進みましょう

(10:30~10:33)別室で遺言者の本人確認

書類のチェックが終わると、遺言者の本人確認のため、遺言者のみ別室に案内されます。(同行司法書士は同席できません。)

別室では、遺言書保管官と対面でのやりとりとなります。主な内容は、本人確認(氏名・生年月日・住所)と、遺言書の自書の確認となります。本人確認では、一時的にマスクを外して、写真と照合するといったことも行います。【所要時間目安5分】

のちに、遺言者の方(高齢の女性)に、このときのやりとりについて印象を聞いてみたところ、対応してくれた保管官も女性だったこともあり、終始なごやかな雰囲気で、特に緊張もしなかったとのことでした。

本人確認の後は、遺言書保管官によるデータ入力作業となります。作業時間は20~30分程度かかりますが、その間は保管所を出て、お茶なり散歩なりをして待っていてもOK(ただし携帯の連絡先は伝える必要あり)との案内がありました。

合同庁舎1階にはロビーや自動販売機、また、お昼の時間帯であれば食堂(グルメプラザ)もあります。外に出かけるには短い時間なので、この機会に庁舎内を散策してみるのもいいかもしれません。

(10:55)保管証を受けとり申請手続は終了

遺言書保管官によるデータ入力が終わると、保管証を受け取ることができます。

遺言書保管証
保管証の他、保管申請後の案内ももらえます

保管証受け取りの際に、遺言書保管官より、申請後のお手続き(遺言者ができることや住所変更等の申出、相続開始後に相続人ができることなど)について簡単な案内がありますので、わからないこと・気になることがあれば、遠慮なく聞くようにしましょう。

これで、保管申請手続はすべて終了です。
今回の所要時間は、受付から終了までで45分ほどかかりました。結構待ち時間が多いので、本などを持参した方がいいかもしれませんね。

それと、駐車場を利用した方は、駐車券を忘れずにもらうようにしましょう。甲府合同庁舎では、駐車券1枚につき1時間の利用が可能なので、入庫した時間から計算して、必要枚数分をもらうようにしましょう。