平成30年の税制改正により設けられた、少額(価額10万円以下)の一部の土地を相続登記する場合の登録免許税の免税措置の適用期間が、令和4年3月31日までに延長されました。
自然豊かな山梨では、相続登記の対象となる土地に畑・田・山林などが含まれていることも多く、通常、これらの土地は少額(10万円以下)で評価されることから、山梨にある多くの畑・田・山林は、この免税措置を適用することで、登録免許税の負担なく相続登記を申請することができます。
本記事では、免税の対象となる土地の条件と、申請の際の注意点について説明します。
相続登記が免税となる土地の3つの条件
相続登記の登録免許税の免税措置の適用を受けるためには、相続する土地が、次の3つの条件に該当する必要があります。
- 相続する土地の価額が10万円以下であること
- 市街化区域外にある土地であること
- 法務大臣が指定する土地であること
3つも条件があると一見ハードルが高いようにも思えますが、山梨の場合、畑・田・山林であれば、条件に該当する土地の方が多いです。少し長くなりますが、ひとつずつ確認していきましょう。
【条件1】相続する土地の価額が10万円以下であること
まず最初の条件として、相続する土地の価額が10万円以下である必要があります。この場合の価額は、「最新年度の固定資産評価額」を基準に計算します。
ただし、固定資産評価額が非課税とされている地目(公衆用道路や用悪水路など)については、登録免許税を計算するのに特別の処理(例えば、公衆用道路であれば、近傍宅地の㎡単価に100分の30を乗じた金額が課税標準価格となります。)が必要となるので、注意が必要です。
【条件2】市街化区域外にある土地であること
次に、相続する土地が市街化区域”外”にある必要があります。つまり、市街化区域にある土地だとダメということです。
市街化区域とは、建物や店舗などがあり市街化された地域のことで、山梨では、甲府市・甲斐市・中央市・昭和町の一部の地域のみが市街化区域として指定されています。そのため、相続する土地が、甲府市・甲斐市・中央市・昭和町”以外”の山梨の市町村にある土地であれば、当然に市街化区域”外”の土地となるため、2つ目の条件もクリアできます。また、甲府市・甲斐市・中央市・昭和町であっても、相続する土地が市街化区域”外”の土地であれば、同様に2つ目の条件をクリアできます。
では、甲府市・甲斐市・中央市・昭和町の市街化区域とは具体的にどの地域なのでしょうか。これについては、次の3つ目の条件でよりくわしく選別することができます。
【条件3】法務大臣が指定する土地であること
最後の条件は、市町村の行政目的のため相続登記の促進を特に図る必要があるものとして、法務大臣が指定する土地であることが必要となります。法務大臣の指定する土地は、各地方法務局のウェブページで公開されています。
上記PDFファイルによると、山梨県の市町村(各地区)別の免税対象エリアは、次のとおりです。
山梨県甲府市の免税対象エリア
市町村名 | 免税の対象の範囲 | |
---|---|---|
甲府市 | 岩窪町 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 大里町 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 大津町 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 小曲町 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 上今井町 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 小瀬町 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 古府中町 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 小松町 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 酒折3丁目 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 下小河原町 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 下今井町 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 善光寺2丁目 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 善光寺3丁目 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 高室町 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 東光寺町 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 西下条町 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 羽黒町 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 堀之内町 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 緑が丘2丁目 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 宮原町 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 山宮町 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 湯村3丁目 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 横根町 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 蓬沢1丁目 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 和田町 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲府市 | 落合町 | 全部 |
甲府市 | 上阿原町 | 全部 |
甲府市 | 上積翠寺町 | 全部 |
甲府市 | 上町 | 全部 |
甲府市 | 川田町 | 全部 |
甲府市 | 国玉町 | 全部 |
甲府市 | 酒折町 | 全部 |
甲府市 | 桜井町 | 全部 |
甲府市 | 里吉町 | 全部 |
甲府市 | 下鍛冶屋町 | 全部 |
甲府市 | 下積翠寺町 | 全部 |
甲府市 | 住吉本町 | 全部 |
甲府市 | 善光寺町 | 全部 |
甲府市 | 塚原町 | 全部 |
甲府市 | 中町 | 全部 |
甲府市 | 七沢町 | 全部 |
甲府市 | 西油川町 | 全部 |
甲府市 | 西高橋町 | 全部 |
甲府市 | 東下条町 | 全部 |
甲府市 | 増坪町 | 全部 |
甲府市 | 向町 | 全部 |
甲府市 | 蓬沢町 | 全部 |
甲府市 | 和戸町 | 全部 |
甲府市 | 猪狩町 | 全部 |
甲府市 | 上帯那町 | 全部 |
甲府市 | 川窪町 | 全部 |
甲府市 | 黒平町 | 全部 |
甲府市 | 下帯那町 | 全部 |
甲府市 | 草鹿沢町 | 全部 |
甲府市 | 高成町 | 全部 |
甲府市 | 高町 | 全部 |
甲府市 | 竹日向町 | 全部 |
甲府市 | 塔岩町 | 全部 |
甲府市 | 平瀬町 | 全部 |
甲府市 | 御岳町 | 全部 |
甲府市 | 右左口町 | 全部 |
甲府市 | 上曽根町 | 全部 |
甲府市 | 上向山町 | 全部 |
甲府市 | 下曽根町 | 全部 |
甲府市 | 下向山町 | 全部 |
甲府市 | 白井町 | 全部 |
甲府市 | 心経寺町 | 全部 |
甲府市 | 中畑町 | 全部 |
甲府市 | 梯町 | 全部 |
甲府市 | 古関町 | 全部 |
相続する甲府市の土地が上記表の「一部(市街化区域を除く全部)」に該当する地区に存在する場合、土地の地番によっては免税措置の対象外となる可能性があります。対象となる土地の情報(所在と地番)をご用意の上、甲府市の都市計画課まで直接ご確認いただくことをおすすめします。
甲府市岩窪町の土地が市街化区域にあるか確認したいのですが。地番は〇〇番と…
山梨県甲斐市の免税対象エリア
市町村名 | 免税の対象の範囲 | |
---|---|---|
甲斐市 | 牛句 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲斐市 | 大久保 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲斐市 | 境 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲斐市 | 島上条 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲斐市 | 天狗沢 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲斐市 | 中下条 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲斐市 | 篠原 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲斐市 | 玉川 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲斐市 | 西八幡 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲斐市 | 万才 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲斐市 | 竜王 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲斐市 | 竜王新町 | 一部(市街化区域を除く全部) |
甲斐市 | 安寺 | 全部 |
甲斐市 | 岩森 | 全部 |
甲斐市 | 打返 | 全部 |
甲斐市 | 宇津谷 | 全部 |
甲斐市 | 漆戸 | 全部 |
甲斐市 | 大垈 | 全部 |
甲斐市 | 上芦沢 | 全部 |
甲斐市 | 上菅口 | 全部 |
甲斐市 | 上福沢 | 全部 |
甲斐市 | 亀沢 | 全部 |
甲斐市 | 吉沢 | 全部 |
甲斐市 | 神戸 | 全部 |
甲斐市 | 獅子平 | 全部 |
甲斐市 | 志田 | 全部 |
甲斐市 | 下芦沢 | 全部 |
甲斐市 | 下今井 | 全部 |
甲斐市 | 下菅口 | 全部 |
甲斐市 | 下福沢 | 全部 |
甲斐市 | 菖蒲沢 | 全部 |
甲斐市 | 千田 | 全部 |
甲斐市 | 団子新居 | 全部 |
甲斐市 | 龍地 | 全部 |
相続する甲斐市の土地が上記表の「一部(市街化区域を除く全部)」に該当する地区に存在する場合、土地の地番によっては免税措置の対象外となる可能性があります。対象となる土地の情報(所在と地番)をご用意の上、甲斐市の都市計画課まで直接ご確認いただくことをおすすめします。
甲斐市牛句の土地が市街化区域にあるか確認したいのですが。地番は〇〇番地と…
山梨県中央市の免税対象エリア
市町村名 | 免税の対象の範囲 | |
---|---|---|
中央市 | 一町畑 | 一部(市街化区域を除く全部) |
中央市 | 井之口 | 一部(市街化区域を除く全部) |
中央市 | 臼井阿原 | 一部(市街化区域を除く全部) |
中央市 | 大田和 | 一部(市街化区域を除く全部) |
中央市 | 上三條 | 一部(市街化区域を除く全部) |
中央市 | 下河東 | 一部(市街化区域を除く全部) |
中央市 | 下三條 | 一部(市街化区域を除く全部) |
中央市 | 中楯 | 一部(市街化区域を除く全部) |
中央市 | 成島 | 一部(市街化区域を除く全部) |
中央市 | 西花輪 | 一部(市街化区域を除く全部) |
中央市 | 東花輪 | 一部(市街化区域を除く全部) |
中央市 | 布施 | 一部(市街化区域を除く全部) |
中央市 | 山之神 | 一部(市街化区域を除く全部) |
中央市 | 若宮 | 一部(市街化区域を除く全部) |
中央市 | 浅利 | 全部 |
中央市 | 今福 | 全部 |
中央市 | 今福新田 | 全部 |
中央市 | 大鳥居 | 全部 |
中央市 | 乙黒 | 全部 |
中央市 | 木原 | 全部 |
中央市 | 極楽寺 | 全部 |
中央市 | 関原 | 全部 |
中央市 | 高部 | 全部 |
中央市 | 藤巻 | 全部 |
中央市 | 馬籠 | 全部 |
中央市 | 町之田 | 全部 |
相続する中央市の土地が上記表の「一部(市街化区域を除く全部)」に該当する地区に存在する場合、土地の地番によっては免税措置の対象外となる可能性があります。対象となる土地の情報(所在と地番)をご用意の上、中央市の都市計画課まで直接ご確認いただくことをおすすめします。
中央市一町畑の土地が市街化区域にあるか確認したいのですが。地番は〇〇番と…
山梨県中巨摩郡昭和町の免税対象エリア
市町村名 | 免税の対象の範囲 | |
---|---|---|
昭和町 | 飯喰 | 一部(市街化区域を除く全部) |
昭和町 | 押越 | 一部(市街化区域を除く全部) |
昭和町 | 河西 | 一部(市街化区域を除く全部) |
昭和町 | 上河東 | 一部(市街化区域を除く全部) |
昭和町 | 紙漉阿原 | 一部(市街化区域を除く全部) |
昭和町 | 河東中島 | 一部(市街化区域を除く全部) |
昭和町 | 西条 | 一部(市街化区域を除く全部) |
昭和町 | 西条新田 | 一部(市街化区域を除く全部) |
昭和町 | 築地新居 | 一部(市街化区域を除く全部) |
相続する昭和町の土地が上記表の「一部(市街化区域を除く全部)」に該当する地区に存在する場合、土地の地番によっては免税措置の対象外となる可能性があります。対象となる土地の情報(所在と地番)をご用意の上、昭和町の都市計画課まで直接ご確認いただくことをおすすめします。
昭和町飯喰の土地が市街化区域にあるか確認したいのですが。地番は〇〇番地と…
山梨県内のその他の免税対象エリア
市町村名 | 免税の対象の範囲 |
---|---|
富士吉田市 | 全部 |
都留市 | 全部 |
山梨市 | 全部 |
大月市 | 全部 |
韮崎市 | 全部 |
南アルプス市 | 全部 |
笛吹市 | 全部 |
北杜市 | 全部 |
上野原市 | 全部 |
甲州市 | 全部 |
西八代郡市川三郷町 | 全部 |
南巨摩郡富士川町 | 全部 |
南巨摩郡早川町 | 全部 |
南巨摩郡身延町 | 全部 |
南巨摩郡南部町 | 全部 |
南都留郡道志村 | 全部 |
南都留郡西桂村 | 全部 |
南都留郡忍野村 | 全部 |
南都留郡山中湖村 | 全部 |
南都留郡富士河口湖町 | 全部 |
南都留郡鳴沢村 | 全部 |
北都留郡小菅村 | 全部 |
北都留郡丹波山村 | 全部 |
登記申請書作成にあたっての注意事項
上記の条件3つともにクリアしている土地については、相続登記の登録免許税が非課税となるのですが、この免税措置を適用するには、登記申請書にその旨を記載する必要があります。記載しない場合には、免税措置が受けられませんので、ご注意ください。
相続登記申請書への記載方法(一部の土地が免税対象の場合)
免税措置を受けるためには、登記申請書の登録免許税の価格欄の下に、免税措置の根拠法令を記載した上で、対象となる不動産の表示の末尾に、再度根拠法令を記載します。
と文章で説明してもよくわからないと思うので、申請書のサンプルイメージを掲載します。
登記申請書
登記の目的 所有権移転
原 因 令和3年4月1日相続
相 続 人 (被相続人 山梨一郎)
山梨県甲府市山宮町**
山 梨 二 郎
添付情報
登記原因証明情報 住所証明情報
令和3年4月1日申請 甲府地方法務局
課税価格 金500万円
登録免許税 金2万円
一部の土地について租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税
不動産の表示
所在 甲府市山宮町字××
地番 1000番
地目 宅地
地積 100・00平方メートル
不動産の価格 金500万円
所在 甲府市落合町字××
地番 2000番
地目 畑
地積 100平方メートル
租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税
実は、相続登記の場合で登録免許税が免税されるケースがもう一つあります。それは、「相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合」の免税措置なのですが、実務上適用できる場面は少ないために、今回は省略してしまいました。ただ、事情によってはこちらの免税措置も有効に活用できるものですので、次回あらためてご紹介したいと思います。
一方、今回ご説明した少額の土地の免税措置については、山梨での相続登記では、結構使える特例です。うまく活用して、かしこく相続登記を済ませておきましょう。